2010年8月24日


C★NOVELS
韓国軍の対馬侵攻作戦第二陣は精鋭・海兵隊。ドック型揚陸艦〝独島〟を旗艦とした一大艦隊が上対馬に迫る。五〇〇〇超の韓国兵に四〇〇名足らずの兵力で挑む自衛隊の運命は......!?
カバー:安田忠幸
刊行日:2009/9/25
新書判/248ページ/定価945円(本体900円)
ISBN978-4-12-501086-1 C0293
私が初めて(民間ルート)で対馬に渡ったのは、かれこれ二〇年近く前だったように記憶しています。当時はまだ福岡空港からYS11が飛んでいました。
何しろ小型だし、エンジン音がうるさいので、乗客たちが不安そうな面持ちだったことを覚えています。私はもちろん、YSに乗れるなんて滅多にないのではしゃいでましたよ、そりゃもう(笑)。
でもさすがに、あの航空母艦のデッキのような台地の上の滑走路に降りる時にはびっくりしました。あんな所に空港を造ろうなんて良く考えたものです。でも現実に対馬には、ああいう平野部は極端に少ないんですね。
翌日、比田勝へと移動し、今回の目的の釜山への航海です。当時、韓国は戒厳令が解除されたばかりで、私たちは、対馬-釜山間に開通した高速連絡線の乗客として乗り込む予定でした。
しかしいくら目と鼻の先と言っても、釜山は外国です。釜山側は国際貿易港ですが、対馬は違います。当然出国手続きが必要なのに、当時は税関員が常駐してなかったんですね。船の出航は、厳原から、ただ自分たちのためだけに税関員が到着するのを待つまでお預けです。乗客は、担当編集者を含めてほんの四、五名だったように記憶しています。
その高速連絡船というのが、また凄まじい代物でした。何処から見てもただの漁船にしか見えないんです(笑)。
いや笑っている場合じゃない。あの辺りは荒れる海です。くるくる天気が変わります。出港時は凪いだ状態だったのに、たちまち白波が出て来る。で、その漁船としか思えなかった連絡船が、これが意外とスピードが出るんです。波に乗り上げるたびに、身体が宙に浮く。こりゃ面白い! と愉しんでいたのは最初の10分かそこいらだけ。
私は気分が悪くなり、生唾を飲み込みながら、洗面器を抱えて船倉で横になりました。そこからふと操縦席を見上げると、両足を踏ん張って悠然と外の景色を愉しんでいる荒巻義雄先生の勇姿が...‥。
さすがに、戦中戦後の混乱期に成人した世代は違うな、と思った瞬間でした。
〔大石英司/2009年9月〕