2010年8月24日



| L | 第1回の募集ということで、どの程度応募が集まるのかまったく予想が出来なかったが、ふたを開けてみると200本ちょうどだったな。 |
|---|---|
| P | ご応募、本当にありがとうございます。 |
| G | さて、選考の流れをご説明します。まず、200本を第一次選考で39本に絞りました。さらに、二次選考で9本に。一次・二次ともに『何本に絞ろう』とは考えず、『この作品は次に残して、より多くの視点から論議するべきだ』が選考基準です。 |
| R | そして1月の投げ込みチラシに一次通過の39本が、2月の投げ込みチラシで二次通過の9本が発表されました。 |
| D | で、最終結果発表が3月の投げ込み&このレポートとなったわけですな。 |
| Q | では二次選考通過作品の9本の選評を。 |
| D | まずは山本哲司氏の『異郷人の回想録』。もっとも票がわれた作品です。とっても大ざっぱにわけると、編集部の中でも中堅組が推して年長組が反対。あ、最年少も反対か。 |
| J | 主人公のトホホ感が全体の抑えを効かせていて、よかったんじゃないか? 書き慣れているよな。 |
| R | 生真面目な筆致とコミカルなキャラが、うまくはまれば面白いと思います。ちょっと分裂気味なのがおしかったですよね。 |
| D | 面白く読みましたが、シリーズを考えているようなので......。この物語が持っている感じはよいと思うので、完結した作品で勝負してもらいたいと思います。 |
| L | 前半のSF・後半のファンタジー――どちらも中途半端なのが、気になる。 |
| P | SF設定で主人公が旅立つまでをじっくり書きながら、肝心のファンタジー世界に来てからがあっさりと中途で終わっていて不満。前半に期待した分、マイナス評価にしました。 |
| Q | 伊藤智氏『ゲーマーズ』 八雲井京佐氏『神代異聞』 高階水冴氏『眩暈のするような雨』の若手3作をまとめていきます。応募時の年齢は順に、一六歳・一七歳・一八歳。3作品ともに最終選考に残る実力を備えていました。でも『ゲーマーズ』は設定が未消化のまま終わっています。 |
| J | 一六歳にしては文章はうまい。しかし話の作りに嫌悪感を抱く読者もいるのでは? |
| D | キレやすい天使などキャラはよく、面白く読みました。全体に文章の荒っぽさを感じたのと、ゲーム世界に依拠している構造が気になります。 |
| G | この話のどこに愛着があって書いたのか、いまひとつ見えてこないのです。自分のこだわりをいかに読者に伝え、おもしろいと感じてもらうか、ということを考えられるようになればと思います。 |
| D | じゃ、次は『神代異聞』。キャラと、色彩は良いように思うのですが、全体的に小粒で魅力が感じられませんでした。 |
| Q | 文章はゆるぎなく、キャラ配置もOK。でも高揚感に欠け、勢いがない。キャラやせりふがトントンと転がっていく感じがないんですね。 |
| L | ここまで「記紀」を取り込んでいるのはすごい。受け身だけど大きな器を持つヒーロー造形はありがちだが、大国主には合っている。脇役もよくはまっている。 |
| J | 「出雲風土記」をよく読んでいる。ただその世界をなぞった世界に留まっているので、今後は史実であろうがオリジナルであろうが独自の世界を築くことを心がけて欲しい。 |
| L | それでは『眩暈のするような雨』。設定を説明するのに精一杯、ドラマの構築に手が回っていない。 |
| P | 法律を扱う一族を特権階級とするのは悪くないけれど、この一族だけしか書かれていません。法律だけおさえても、権力維持は無理ですから。 |
| Q | おそらく、全体を大まかに見通した絵図は事前に描いたものの、緻密な設計図はつくらずにキャラを走るままに任せたのではないかな? でも、物語の構造はこれからでも学べます。キャラよし、会話もよし。描写力もまあまあ。古代ローマふう世界に日本神話をぶつけたのには驚かされましたが、力業でなんとかまとめきった点も若さとして評価。 |
| L | うーん。ローマふうに日本神話のキクリヒメは違和感なかったか? |
| R | 違和感があった派となかった派で、やはり意見がわかれました。半々ぐらいの割合かな。 |
| D | 世界観の整合性に、若さが悪い形で出ちゃったということでしょうか。 |
| J | 次、辰巳シロウ氏の『千の花の夢』 |
| D | たつみしろう(苦笑 |
| L | そうなんだよ。この作者は知らなかったんだろうが、近年亡くなられた辰巳四郎氏という装幀家と音(オン)が一緒なんだよなー。 |
| R | なんか、問題なんですか? |
| L | 問題だとか、悪いとかではないが、「え!?」と思う出版関係者は多いと思うぞ。 |
| P | あ、ここでお詫びがひとつあります。3月刊の投げ込みの選評に『千の花の夢』の作者の年齢を一八歳と記しましたが、まったくの間違いです。誠に申し訳ありません。 |
| L | 申し訳ありませんでした。 |
| P | では、話を選評に戻します。 |
| Q | 描写力がなく、肝心のホラーシーンが想像しにくかったです。構造はよく練られているとはいいがたいし。キャラの立たせかたも、不十分では? |
| G | 場面によっては、よくできている部分もありましたが、まず、キャラクターの性格や言動などを作品の中で統一することが必要でしょう。そういう発言をするキャラクターだっけ? と疑問を感じた部分がけっこうありました。 |
| L | 夢読み族の落ちこぼれには親近感が持てたんだがなあ。 |
| R | 盛りだくさんすぎて散漫な気がしました。 |
| L | 安藤亮氏の『仰ぎ見た景色』の、歴史小説の香気を感じさせる文章を買う。 |
| P | 読みにくかった。 |
| R | 読みにくい......。 |
| G | 文章が装飾過多でわかりにくいです。 |
| L | う......割れたな。字(あざな)や改名の多用される中国歴史小説では、読者が混乱しないような配慮が必要なんだ。地名や人名など漢字が頻出されるとっつきにくさを和らげる工夫が、先達の作品にはなされているので、参考にして欲しい。 |
| Q | 後半の、仙人の登場が唐突だったように感じませんでした? 前半が歴史小説、後半が伝奇ファンタジーと二分されたような印象が。これだけ文章書けるのになあ。 |
| J | 曹操やその長子という歴史上の人物を使うのであれば、人物造形や設定に配慮を求めたい。読者がある程度知っている世界なので、その想像力を凌駕するような世界や設定を考えて欲しい。 |
| D | では外山哲喜氏の『山賊姫 継ぐもの』は? 後半のテンポはよかったですよね。 |
| R | 意欲的に面白くしようとした内容でした。 |
| L | 物語は破綻しているが、もっともパワフルだった。王の証を、血脈なのか神器のようなものにするのか、王権や国家に関する姿勢が定まっていないのがこの種のジャンルとしては致命的だろう。 |
| Q | 冒頭の文章の粗さに閉口しました。まるで、あらすじを読んでいるよう。でも、主人公リサがはじめてドレスを着るシーンなどの、見せ所はなかなかのものがありますよね。後半は夢中になり、今回の応募作中で一番ワクワクしながらページをめくらせるパワーを感じました。 |
| G | エンタテインメントとして非常に読ませる力を持った作品です。それだけに、影響を受けた作品が一読して分かってしまうのはまずいでしょう。影響を受けることそのものはけっして悪くありませんが、そこにどのように自分のオリジナリティを加えるかがプロの力量ですから......。 |
| P | では特別賞を受賞した内田響子氏の『聖者の異端書』に移りましょう。 |
| G | 非常に落ち着きのある作品といえます。オリジナリティは応募作の中で抜きんでていました。設定などで読者を限定するかもしれませんが、それでも何らかの賞をあげたいと思わせられる出来映えです。 |
| L | 異端書はどこへ行ったんだ!? |
| Q | 聖者の異端書と本文の結びつきが不明瞭なんですよね。 |
| G | 主人公が「婚約者を捜しに行こう」と思った動機が読者にストレートに伝わってこないのです。この希薄な部分を補うと非常によい作品になるのではないかと思います。 |
| L | では最後に大賞受賞作、藤原瑞記氏の『光を生む森へ』について。本作を受賞対象とする点については、編集部の意見がほぼ一致した。 |
| G | キャラクター、設定、文章力すべてが水準以上で、総合力は最終選考作品の中で随一でした! |
| Q | 実力のあることがうかがえます。キャラは魅力的だし、周囲の配置もよいですね。この一冊で解き明かされていないことも多いですが、大きな矛盾・違和感はないので、世界設定もよしとします。主人公エリと兄の確執、エリの中の精霊、同行者ファティの出生・北の母上の病気――等の種をまいたのに回収し切れていない点が問題かと。 |
| D | キャラと妖精世界はよいのですが、人間世界の物語がわかりにくいです。主人公も読者も人間なのだから、キチンと読ませないとね。 |
| L | よし、あとは、応募作全体について気がついたことをまとめよう。まず、この『C★NOVELS大賞』という名称にもあるように、この賞はノベルスと呼ばれる新書サイズのエンタテインメント小説を募集しているものです。読者が何を求めているのか、よくよく考えて書くことを心がけてください! |
| D | タイトルに華がなくて、安易なものが多かったですね。書店の店頭で何を読もうか悩んで複数の本を見比べたとき、タイトルの印象は大事でしょう? 手に取ってみたくなるようなタイトルをつけましょう。 |
| Q | ペンネームも大切なんですよ。これから、不特定多数の読者さんに名前を覚えてもらって、次の本も買ってもらおうとしているわけですから、初見で読めない名前やどう読んでいいのかわからないペンネームは不利なんです。 |
| J | 辞書を引くクセをつけたほうがいいよ。わからない言葉を何となく使ったり、うろ覚えの熟語を意味も確かめずに使うことは、プロはしない。 |
| R | 同音異義語の選択ミスも多いですね。読み返していないのかな。 |
| G | 書いている作品の推敲は必ずしましょうね! 前章・前節で主人公が正反対のこと言ってるんですけど? と悩む話が多かったですよー。 |
| L | あと、これも要注意! 消印の日付が過ぎていたものは、問答無用で次期送りにします。くれぐれも応募締切にはご注意ください! |